[一切未見の人へ]
[当作品を見捨てた人へ]
[原作コミック評価]
〜美しき絵、切ないストーリ、細やかな描写〜
[Vol.1原作比較詳細批評]
原作比較詳細批評
第1話 兄弟、第2話
天体観測
第3話 少年
第4話 人形
第5話 約束
[Vol.2原作比較詳細批評]
[Vol.3原作比較詳細批評]
●七人の小人
トリエラはヒルシャーから送られるテディ・ベアに、ディズニーアニメ『白雪姫』に出てくる7人のこびとの名前を付け始めた。ガンスリのアニメーション第四話では、トリエラは『7人の妖精』と言っているが我々には「七人の小人」の方が馴染みがあるだろう。
「こびと」にも様々な種類があるが「白雪姫」に出てくるのは神話・伝説で言うドワーフと呼ばれる生き物であり、実際『白雪姫』の原題は「SNOW WHITE and The Seven Dwarfs」となっている。
現代ファンタジー作品に大きな影響を与え、近年映画化されたJ・R・R・トールキンの『指輪物語』でもドワーフは、主要な登場人物である旅の仲間の一人として出てくるので、覚えている方も多いかもしれない。トルーキンの作品ではエルフもドワーフも見た目は人間に近い種族として出てくるけれども、サイト「Fairy Tales」などによればエルフなどと同様に「妖精」の部類に入る伝説上の生き物のようである。
アニメーション『白雪姫』は子供用のアニメの代表として考えられることが多いが、世界初の長編カラーアニメーションであることも注目すべき一つである。当時、実写映画でもカラー作品はほとんど無かったため、極彩色ともいえる画面が繰り広げられたことに対して、子供は無論のこと、大人にも吃驚の作品であったことは想像に余りある。
また、七人の小人に様々な性格付けをすることで、物語が生き生きとしたものになっていることについては、おかだえみこ氏が『アニメの世界』(新潮社)で賞賛している通りだ。
七人の小人の名前であるが、英語をカナ読みする際に随分バリエーションが出てしまったようで、かなりいろいろある。ガンスリに出てくる読み方「ドービー」「グランビー」と濁る読み方は必ずしもメジャーではないようだ。
名前 | 英語名 | 直訳 | 日本語訳 |
ドービー ドーピー ドッピー ドッビー |
Dopey | 鈍感な | おとぼけ |
グランビー グランピー グランピィ |
Grumpy | 気難しい | おこりんぼ |
スニージー | Sneezy | くしゃみ | くしゃみ |
スリービー スリーピー |
Sleepy | 眠い | ねぼすけ |
ハッピー | Happy | 幸福な | ごきげん |
バーシェフル バッシュフル |
Bashful | 内気な | てれすけ |
ドック ドッグ ドク |
Doc | =doctor=先生 | 先生 |
●スペイン広場でジェラート
ジェラートとは「イタリア風のアイスクリーム・シャーベット」のこと(広辞苑より)。しかし厳密にはアイスクリームの中でも、特定の種類を指すらしい。
日本人が観光旅行でローマ好きなのはオードリ・ヘップバーン主演の映画「ローマの休日」の影響が多大にあるらしいのだが、「スペイン広場でジェラート」というこのネタも、この映画も基づくもの。
「ローマの休日」は確かにオードリ・ヘップバーンの美しさと、話の内容の小粋さは名作と呼べる作品であると言える。
ちなみにガンスリでは出てこないが「トレビの泉」もこの映画による普及が大きいようだ。
●フィレンツェ
実際のフィレンツェとの対比はカズくんのオタおた日記の「マリみて・ガンスリのイタリア机上旅行クラブ」を参考にされたい。
ただし「ザビーネ女の略奪」は一般には「サビニ女の略奪」が通称らしい。
コミック版の第一話でジャンが自分の担当する少女について述べた言葉。素直に読むならリコのことである。
CFS症候群とは一般に「慢性疲労症候群」を指し、その病気は名称から分かるように疲れが取れない病気である。ただし通常の慢性疲労とは異なり、半年以上継続する病的な疲労継続の場合を指す。現在のところ原因は不明で、医者の中には独立した病気であることを疑い、他の病気から来るそのような症状の総称にすぎないという見方を取る医者もいるようだ。
ただし、この病気に関して「全身マヒ」というレベルの症状まで達する記述は、私の調べる限りとりあえず見あたらず、果たしてガンスリでリコの症状がそれだったのかは不明であり、特にリコが登場するコミック第二話で「四肢に障害」とリコ自身が述べている点からすると違和感が否めない。
アニメーション版ではコミック第二話に相当する第3話で、リコが苦しんでいる場面が冒頭に出てくるが、これは逆に「慢性疲労症候群」の重病の病状を表しているようではある一方で、CFS症候群については言及していない。
これらからするに、コミック版では相田氏の設定が甘かったか、移動の不自由を伴う難病を「CFS症候群」という言葉で代用したかのどちらかであり、アニメーション化に伴ってはそれらの不整合をなくすべく、より曖昧化させたのだと思われる。
全く余談であるが、第一話で述べられるヘンリエッタが受けた「暴行」というのは言うまでもなく強姦(レイプ)だと思われる。
一般に、日本のマスコミ報道では「強姦」「レイプ」「輪姦」などの言葉は強烈すぎるとして、そのような言葉は忌避され、大人の女性の場合には「暴行」(および「集団暴行」)、年少の場合には「いたずら」などの言葉が使われることが多い。ガンスリ第一話で使われた「暴行」という語もそのような代用語にしか過ぎないと考えられ、その後にコミック第三話で、痛ましくも彼女のセリフ「子宮もとられちゃったから・・・」という部分に繋がっている。
(悲しいことにこれも「細やかな描写」の一つになるだろうか。当初これには触れたくなかったのだが...)
なお、このような曖昧な言葉を使うことについては、「セカンド・レイプ」(レイプされた被害の後、そのことを報道・裁判などで扱われることにより、精神的な二次被害を受けること)を配慮する観点から肯定する意見と、レイプ被害の事実を矮小化するものとして批判する意見の両者があるようだ。
更に余談であるが、言うまでもないことであるが、上のように残酷な場面が想起される面を持つから、という理由でこのコミックを簡単に批判すべきではない。上のようなむごたらしい「暴行」などの事件、そしてそれが殺人に結びつくような事件は実際に日々起こってきたし、痛ましいかな、現在もたびたび起こっている。私達は世の中で起こっている酷い(むごい)事件について、目を背けるべきではないし、コミックの中でそのような事件が触れられることを嫌悪するのはむしろ不自然であろう。
もし「婦女暴行」事件などに関心を向けるなら、日本に起こっている殺人事件の「実態と事実(に近いもの)」について、是非、個人サイト「無限回廊」などで読んでおくと良いと思う。というか、市民である我々、そして裁判員制度の始まる今、我々はこのような事件が起こっている事実を知っておくのが義務となりつつあるのではないか。
戦争のような極限状態になくても、社会の中で残酷な行為が発生するのか、その事実に慄然とするかもしれない。そしてそのような場合に社会がどうすべきか、それも皆が考えねばならぬであろう。その際にコミック「家栽の人」などは考える材料になる部分があるかもしれない。
(この注記は「暴行」をキーワードにした検索結果から訪問してくる人が意外にしばしばいるようなので記した)